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いきなりまじめな投稿を。

マイケル・ジャクソンの映画「THIS IS IT」を3回も観てしまった。

言っておくが僕は別にマイケル・ジャクソンファンでもなんでもなかった。
このタイミングで行くのをにわかファンと言うならにわかファンだろう。

一応音楽の基本としてベストアルバムとアルバム2枚を持っていて、DVDのHISTORYを持っている程度。

マイケルのゴシップが耳に入るたびに「マイケル本当はすごいのになー、パフォーマンスで証明できればいいんだけど、いい加減歳だし、曲もしばらく出してないし、、マイケルも確かに変って言えば変だし」ぐらいの感情しか抱かなくなっていた。そういう訳で亡くなったときも音楽業界にとって大きな財産がなくなったという感覚はあったものの、個人的な思い入れがなかったため、喪失感はなかった。

今回この映画を観に行ったのは実はTBSラジオで土曜日9時からやっている「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル」にゲスト出演していたノーナ・リーブスの西寺郷太さんの影響が大きい。西寺郷太さんはミュージシャンであり、おそらく日本で一番のマイケル研究家である。

僕は文化放送でやっていたノーナ・リーブスのカモンファンキーリップスというラジオのリスナーで、当時吉本で売り出し中だった今田東野のリップスと共に流れで聴いていたのだった。

その西寺さんがウィークエンドシャッフルに出演されたとき、僕は宇多丸さんはさすが目の付け所がいいな、と思うと同時に西寺郷太さんの「マイケル漫談」とも言うべき面白マイケルトークにすっかり虜になってしまった。膨大な量のマイケル知識に裏づけされ、さらにそれを面白おかしくプレゼンする能力。マイケルという音楽界でもエピソードに事欠かない面白い人を面白く話すのだから面白くないわけがない。

そんな西寺さんがマイケルの死から受けたものは察するに余りあるのだが、彼はただ落ち込んだりはしなかった。マイケルに対する誤解を解いて正確な歴史を広めるため、そしてマイケルに対するミュージシャンならではの視点を記すために本を執筆する。『新しい「マイケル・ジャクソン」の教科書』である。
僕がこの本で非常に興味深かった点は主に3つほどある。
一つは契約の件。
モータウン・レコードが契約でガチガチにアーティストを縛っていたことは有名だったものの、それがどういう制約があり、どのような不利益があるのかミュージシャンの視点から語られていること。
二つ目は時代背景の描写。
マイケルが生きた時代を彩った他のミュージシャン、クイーンやウィー・アー・ザ・ワールドに参加したアーティストなどとの関わり、プロデューサーの移り変わりなどについての関係がわかりやすく書かれている。マイケル一人に焦点を当てていたのではわからない背景が描かれている。
三つ目は思惑について書かれていること
はっきり言って推測にすぎない部分もあるが、マイケル周辺で起こった事件についてこの人はこういう事情でこの行動を取ったのではないか、という作者の考えがきちんと書かれている。マイケルの周辺で起こった事件だけ追うならば再販された『マイケル・ジャクソン全記録1958-2009』で事足りてしまうが、音楽業界でどのような思惑を持って人々が渡り歩いて行くのかが作者の論理的な説明と共に描かれている。

長くなったが、THIS IS ITの話に戻る。
西寺さんの本は確かに名著だと思う。
しかし『新しい「マイケル・ジャクソン」の教科書』には描かれていないものがある。
それは最後の一幕、THIS IS ITツアーがどのようなものだったかというものだ。
先週11/7放送のウィークエンドシャッフルのシネマハスラーで宇多丸さんがTHIS IS ITを評論していたように、この映画は最後の3幕目であり、長い物語の最後にマイケルは何をしていたかという記録である。このことを確かめなくてはオチのない落語を見に行っているようなものである。これが僕がTHIS IS ITを観なくてはと思った動機だ。

THIS IS ITで描かれていたもの、
それはマイケル・ジャクソンが50歳を迎えてなお、ダンスと歌と音楽的才能の頂点にいた。という紛れもない事実。
自分の子供ぐらいの年齢のダンサーと踊っているシーン。絶対にマイケルにしか目が行かない。世界の一流のダンサー達にまぎれても絶対埋没しない存在感。
歌は軽く流してもリズムは完璧。
曲の構成について的確にアドバイスできるプロデュース能力。
全てが高いレベルで結実しており、やはり「天才」と言うほかない。
そしてこの映画に写っていることでなにより重要なのは、マイケルも歌の構成に悩んだりリハーサルを繰り返してパフォーマンスを作り出す「人間」だったんだという事実。
ケニー・オルテガは意図的に編集したのだろう。下手なナレーションや演出を入れず、一人の天才の人間がショーを作り上げるまでの「記録」として残すこと、そして最前列で最高のリハーサルを見ていた自分たちの幸せをおすそ分けしてあげること。
ありがとう、ケニー・オルテガ、ありがとう、マイケル。

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